「静奈。ちょっと」



ちょいちょいと、もっと距離を縮めさせてくる水悠。

そろそろ戻って選手たちの飲み物やタオルの準備をしなければという手前だったのだけど、あたしはそいつを優先させた。



「だいじょーぶ。ほら深呼吸、落ち着けって」


「っ、」



伸びてきた手が、あたしの動きも同化させる。


そっと触れあった温もり。
ぎゅっと握られた安心感。

それだけが、緊張と不安を少しずつ溶かしていった。



「お前がそんなだと、チームメイトのやる気も下がるよ」


「…あたしが鬼練メニュー考えたりして、いっぱい鍛えた奴らだから……へいきよ」


「はは。なら最強チームってことじゃん」



またあんたと一緒にマウンドを見れるなんて思っていなかった。

同じ球場に立てるなんて、思っていなかった。


再び繋いでくれた野球は、あたしたちにとってかけがえのないものだ。