本来の距離感よりも狭まった位置。
天才二刀流中学生だなんて、冗談でも言えなくなった無能ピッチャー。
「あんたが認められないなら…、そのぜんぶ、あたしが認めるから…!!」
投げてこい、ここに入れてこい。
まっすぐ、あんたが思うままに。
弱さも、後悔も、怒りも、叶えたかった夢も。
ぜんぶぜんぶ、どんなボールだってあたしが受け止める───。
「だから俺はもう……無能なんだって」
「あたしのヒーローを馬鹿にしないで…!無能なんかじゃないっ、ミユは天才なの…!!」
まだそんなこと言ってくれるんだ。
俺はもう、誰からの期待も消えたような男だってのに。
お前だけはまだ信じつづけてくれんの。
ヒーローなんて、天才なんて、言ってくれんの。
「……っ、」
ああ、ほら。
やっぱりまだ少しだけ震える。
転がってきたボールを握るだけ。
たったそれだけで、こんなにも脈打つ動悸に、吹き出す冷や汗。
「ミユ」
がんばれ、がんばれ。
俺の背中を押すというよりは、支えてくれているような声だった。



