甲子園、行くんで───その言葉だけで校風さえ覆したという。
『いろいろすげえよな。中学の野球なんか見てもねーの。ここはただの通過点、…久賀と掴む夢までの通り道でしかないって、淡々と言い放ったんだあいつ』
そこからだという。
森さんに歯向かったらヤバいと、部員たちが察したのは。
だから私は、何ひとつ分かっていなかったんだ。
久賀くんがかつての友利だったように。
かつて森さんは、今の私だったこと。
「森さん。甲子園に行くのは、森さんだよ」
「っ…」
でも、私は森さんじゃない。
森さんは私じゃない。
私には私だからこその立場があるように、あなたにはあなたにしかない場所がある。
マネージャーとしてここまで這い上がったのは森さん。
苦しむ仲間たちをいつもそばで見守って、それでも諦めず今の場所に立ちつづけたのは森さん。
久賀くんの手を甲子園まで引くことができるのは、あなたしかいない。
「あたしたちの夢は……、まだ終わってないから」
「…うん」
「…あたしのヒーローは、まだ終わってないの」
「うん」
久賀くんのことを誰よりも信じて、今も信じつづけている人は。
こんなところにいた───。



