そもそも女子野球はまだ主流ではない。
どこかの町では女の子も揃えている野球クラブはあるかもしれないけれど、
あたしが住む田舎町にそんな都合良いことがあるわけなかった。
そして、甲子園だけは女が行く場所ではないこと。
それだけは長い歴史で決められていること。
『やだ!!!行くの!!!』
『あ、やば。こうなったら女王様になるんだった』
『ミユのばかっ!!うざいっ!嫌いっ!!ミユなんかだいっきらいっ!!』
『……しょーがない。なら、おれが連れてってあげる』
高校球児しか目指せない場所が、甲子園。
だけど唯一、それでも女の子もベンチに入ることができる特別な立場があると教えてくれた。
『まねーじゃー?』
『そう。いつか同じ高校に行って、おれがピッチャーでシズナはマネージャー。それなら一緒に行けるねコーシエン』
『……!!』
たとえ家が離れていても、高校を同じにすればいい。
それまでお互いにそれぞれをレベルアップさせて、いずれ同じ夢を追おう。
そう話してくれた水悠は、あたしにとってヒーローだった。



