『彗。不器用な父親で、ごめんな』
振り返って、1度だけ微笑みを見せて、お父さんは最後そう言った。
夜釣りにもハマったんだ、とか言っていたけど。
そのとき釣竿すら持っていなかったよね。
思い出せば思い出すだけ、ほんとうに不器用な人だった。
「彰の得意球は変化球。ストレートではないが、必ずストライクゾーンギリギリに入れてくれるんだ」
「……不器用ですね、すごく」
「…恥ずかしがり屋だったんだろうな」
それから私は、走った。
手を握ってあげるくらいなら私にもできる。
難しいことなんかいらないんだ。
ただ心に寄り添われるだけで、人なんてものは弱さを見せることができる。
『夢、あるだろ。お前にも』
『大学、行きたいって顔に書いてある』
思い出した。
そういえばって、気づいた。
あのとき、集会所の裏で、私の手を握ってくれていたのは友利。
私が感情的になって気持ちをぶつけた日、あんたは私の手を握ってくれた。
最初、そうしてくれたのは友利だったんだよ。



