「……お父さん」
会いに行くことなんて、できる。
ここから向かえる距離の市立病院に居るとは聞いていたから、今から行けないことだってない。
でも行けていないのは、私自身が腰を引いてしまっているからだった。
お父さんを救えなかった私が、いま友利に会いに行ったとして。
そこで何ができるんだろうって。
もし何もできなかったらまた私は後悔に溺れてしまうんじゃないかって、怖くなったからだ。
「このグラウンドには何かがあるのかもしれないな。───早見」
「っ!……寺田、監督」
名前を教えた覚えはない。
のだけど、今もサラッと呼んでくる野球部の監督。
この人は前もそうだったけれど、私に誰かを重ねているように話す。
「お久しぶり」
「…お久しぶり、です」
「まさか彰(あきら)の娘にまで会わせてくれるなんて、このグラウンドは俺に優しいみたいだ」
また前みたいにいろいろ聞かれるのかな…と憂鬱だった私は、時間が一瞬だけ止まった。



