音楽科である千葉先生は、図書委員の担当でもあり、放課後は吹奏楽部の顧問までをもしている。

忙しい毎日ということは生徒側である私ですら想像つくが、まさか相談員まで受け持っているとは。


器用なんだな……と、改めて関心だ。



「第一種奨学金」


「…え?」


「早見の成績なら、無利子で受けることができるかもしれないよ」



奨学金制度というものがあることは、もちろん知っていた。

世間の学生は一般的にも利用しているだろうし、卒業してから自分で返していくものだとも知識としてはあった。


ただ、そのなかにも種類があること。


条件が厳しければ厳しくなっていくほど、クリアすれば他より優遇されたものが受け取れる。



「こんなこと生徒に言ったことないんだけどね。あたしも片親で育って、…中学のときに親を病気で亡くしてる」


「え…」


「それから祖父母に引き取られて、正直進学は諦めてた。……でも裏を返せば、自分には勉強しか取り柄がなかったのも本当」