こんなにがむしゃらになって追いかけていただろうか。

ここまで一生懸命になれていただろうか。


1回挫折を味わったから、地獄を見たから、俺は上がれたんじゃないのか。


俺は今、この俺が立っている場所があるから、甲子園が見えたんじゃないだろうか。



「でも今は、ぜったい行けるって思うんだよ」



明日の初戦、おもいっきり暴れてくる。

これは階段なんだ。
通過点なんだ。

躓(つまず)く段差さえ気にならないほど、暴れてくるよ。



「───友利」



ずっと瞳を伏せていた久賀が、はっきりと俺に合わせてきた。

こうして呼ばれることも数年ぶり。



「…野球を辞めたとき。おまえ、なにを毎日考えてた?」



そんなの、わかってるはずなのに。
どうしてわざわざ再確認なんかしてんだよ。

もうお前は、気づいてるって顔してる。




「俺たちに野球以外のこと、考えさせるほうが無理じゃね?」




お前もそうだろ、久賀。

………今だって。