また、その顔。
唇をぎゅっと噛んで、震えるほどこぶしを握るの。
知ってる、その仕草は。
私だって何度も何度も経験済みだ。
「でも、びっくりだった。…そいつ、人の夢潰しといて自分はちゃっかり野球をまた始めてんだって。
しかもピッチャーじゃなくキャッチャーだなんて。それならせめて許されるとでも思ってんのかな」
「…………」
「だけじゃなく、…甲子園目指してるんだってそいつ。ひどいと思わない?」
もし、この人が。
この人が“久賀”という人だとしたなら。
いま聞かされた物語のピッチャーBに当てはまって。
Aは良く知る人物なんじゃないかって、また考察してしまいそうになる。
『…おまえ、中学のときのこと忘れたわけじゃねーよな。久賀の気持ち考えたことあんのかよ』
『お前より才能あった久賀の人生潰しといて……まじ最低だな』
考察……?
ううん。
こんなのもう、答えのようなもの。
「連絡先、交換しよーよ早見」
「…なん、で」
「んー、大学進学を目指す受験仲間?みたいな」
新しく追加された名前。
久賀 水悠(くが みゆう)という、間違いのない名前だった───。



