「この坂を上ったとこのサカキ工具店、あるじゃないすか。そこでタイヤパッチとか買ってきてもらえたり…しません?」
しません。
そんなの自分でお買い求めください。
あるじゃないすかって、当たり前のように言われても知らないしサカキ工具店なんか。
みんな知り合い、みんなが家族、この町のモットーがたとえそんなものだとしても、私は違うの。
「この坂はさすがに俺ほどの脚力があっても無理そうで。ほんと図々しいっすけど」
雪が無かったらなあ───なんて、誰もそんなこと聞いてないよ。
俺ほどの脚力って、なんにも面白くないし。
ほんと、図々しい。
この町もきらい、この町の人間もきらい。
「…急いでるので」
「あっ、ならここで俺の自転車を見張っててくれればいーんで!」



