それか若い女の子に近づきたいセクハラ……、いや、確かそれは卓球部のコーチだって友利は言ってたっけ。
ちなみにそんな噂、校内で1度も聞いたことないけど。
「───早見」
「…えっ?」
初対面の人間にいきなり名前を当てられたことに対する驚きと、まさかの呼び捨て。
あたまが上手い具合に混乱していると、グラウンドから監督を呼ぶ声。
なんだったの……。
小走りで教え子のもとへ向かってゆく寺田監督を見送って、私は首を傾けた。
「っ!」
集った野球部のなか、そいつの姿だけはすぐに見つけられるのだから嫌だ。
重なった視線を逸らそうとする前に、なにかを伝えてきた。
“そっちのベンチ、座ってろ”
解読できた口パク。
フェンス脇にある、気持ち程度に置かれたベンチ。
言われたとおりに、そのベンチへと腰を落とした。



