柊星くんは溺愛したい

いつまでも顔を見つめたまま返事をしない私に先輩は高い背中を曲げて顔の高さを合わせる。

ふんわりと開いた窓から吹いた風に乗ってチョコレートを彷彿とさせる甘い香りがした。クラクラと甘く切ない気持ちになる。


「……ありがとう、ございます」

ぎこちない口調で伝え、重たい本たちは先輩の腕へと移った。手持ち無沙汰になってしまった私は胸の前で両手の指を組む。


「その、昨日のこともありがとうございました。お礼言いそびれちゃってたので……」


「あれか、別に良かったのに。時間無くて急いで図書室出てったのは俺だから」


にこりと一瞬、柔らかく口角を上げた先輩に、どきりと胸が高鳴った。それから先輩が本を抱えてくれていることを思い出し、倉庫へ運んでいたところだと説明する。

「毎日やってるの?」

「週に3回ぐらいですかね。1年ちょっと経ってやっとここまで整理出来ました」


図書室に置いてある倉庫への鍵をポケットから取り出し解錠した。閉じ込められていた熱い空気の流れを感じる。

倉庫のドアを押さえると先輩も倉庫の中へ入った。初めて入ったと小さく呟き、ぐるりと辺りを見渡す。


「あ、この本の本棚はここなので貰いますね」