◾️1話
 黒川くろえは異世界に召喚され不気味な集団に「聖女様」と呼ばれた。訳もわからないうちに不気味な集団はこの世界の警察のような組織・魔術部隊に全員捕縛されてしまうのだった。くろえが呆然とする中、フィンリーが声をかけてきてくれた。フィンリーはくろえが聖女だと呼ばれたことを聞くと妙な表情を見せた。そして異世界召喚が禁忌であること、聖女がこの世界では歓迎されないことを告げられる。
 勝手に召喚され、勝手に聖女だと祭り上げられたのに、歓迎されないと言われる始末にくろえは呆然とする。
 「あれ?私、どうすればいいの?」
 くろえは乾いた笑いしか出ないのだった。

◾️2話
 優しいフィンリーに連れられてとりあえず保護されることになったくろえ。異世界から召喚された人々は高い魔力を持っている特徴があるらしく、フィンリーはくろえの魔力の確認をしたいと申し出た。せっかくの異世界なのだから前向きに楽しもうと切り替えたくろえは、魔力の確認にも当然承諾した。むしろ楽しみにしていた。そこでノエルによって魔力の検査を行うものの、何とくろえには魔力が全くないと判明する。
 異世界召喚ってチート能力があるものじゃないの!?と絶望するくろえ。悔しくて机を叩くと綺麗に真っ二つに机が割れた。
 「え?私のチート能力ってもしかして腕力?」
 ちゃんとチート能力はあったものの素直に喜べないくろえなのであった。

◾️3話
 腕力の能力についてノエルと一緒にフィンリーに報告するくろえ。きっと優しいフィンリーなら受け入れてくれる、くろえはそう思っていた。しかしくろえに魔力が全くなく腕力しかないと報告するとフィンリーの態度が一変。優しかったフィンリーはくろえを馬鹿にして「まるでゴリラだ」と嘲笑った。若きエリートのフィンリーは実は裏表の激しい腹黒野郎だったのだ。
 魔力がないとなるとくろえに残された道は雑用係しかないと告げられる。魔法の実力が全てのこの世界では魔法が使えないことは致命的だったのだ。悔しいがくろえに残された道はなく、嫌々ながら雑用係としてフィンリーの下で働くことになった。
 「異世界まで理不尽すぎる」
 こうして腕力チートで聖女(仮)のくろえの異世界生活が幕を開けるのであった。