「そもそも、なんであんたみたいな奴が夢野さんと一緒にいるのよ」


既に俺のことは客だと思っていないのだろう。
凪は腕を組みながら座っている俺を見下ろす。



別に答える義務はないだろと無視をすると、「やっぱり悪魔みたいな男っていう噂は本当だったんだ」と呟いた。



そんな噂があるのは知らなかったが、そういった類の噂があっても否定しない。
わざわざ否定するのもめんどくさいし、勝手に言わせとけばいい。




「勘違いしないでよ。夢野さんは優しいからあんたみたいな男でも相手してあげるの」



別に相手してほしいなんて思っていない。
このまま無視してもいいが、隣でずっとグチグチ言われるのは腹が立つ。



言い返そうと凪の方を見ると、ちょうど夢野がキッチンの方から出てきた。



「あらあら、もう仲良しなの?」



「これのどこが仲良しに見えるんだよ。目腐ってんのか」



「夢野さんの目は腐ってない!・・・でもこんな奴と仲良いと思われるのは心外ですっ」



そう言って凪は、私は夢野さん一筋ですよ!と、夢野の右腕に抱きつく。



抱きつかれた夢野は、よしよし。と凪の頭を撫でた。



反吐が出そうな空気に耐えかね、グラスに入った水を一気に飲み干す。
氷の入った水は、一気に体を冷やした。



「18時くらいから涼しくなると思うので、あと3時間くらいは此処でゆっくりしてください」




カフェの壁にかけてある時計を見ながら、夢野は俺の空いたグラスに水を注ぐ。



「ええっ、こいつ、あと3時間もいるんですかっ」



「お客さんにそんな事言っちゃダメだよ?」



「でもこいつ・・・」




夢野に注意された凪は、飼い主に叱られた犬のようにしゅんとする。


すみません。と、俺に謝らずに夢野に謝るあたり、悪いことしたとは思っていないんだろうな。