飛行場の片隅でじっとしている飛行機が居ました。
彼はいつも空を眺めながらこう思っていました。
 (いつの日か、あの大空を自由に飛び回りたい。 誰にも指図されること無く何処までも何処までも自由に、、、。)

 人間たちは彼に荷物を載せては飛び、人を乗せては飛びます。
ある時には時間に遅れそうだと文句を言い、ある時には載せられる荷物が少ないと怒りだします。
そのたびに飛行機は思うんです。
(そんなことを言われてもぼくのせいじゃないやい。)

 下を見ると大きな貨物船が自分より遥かに多くの荷物を載せて走っているのが見えます。
ある時には大きな客船がデッキにまで溢れるくらいの人を乗せて走っています。
(いいなあ。 でも大変だろうなあ。 ぼくは嫌だ。 自由に空を飛び回りたい。)
 風の日も、雨の日も、彼は空を見詰めてぼんやりしています。
 それをずっと見ていたお日様が彼に言いました。
(夜になったら東の空へ飛び立ってごらんよ。 思い通りに飛べるはずだから。)
 その日の夜、暗くなって静まり返った飛行場から彼は飛び立ちました。
もう重たい荷物を運ぶことも、たくさんの人間を乗せることも有りません。
嬉しくなった彼は何処までも何処までも飛んでいきました。
それがいつか、飛行機雲になったんです。
彼は今も嬉しそうに飛んでいますよ あの空を。