カー カー、、、カー カー。
一羽のカラスが飛んでいます。 何かを探しているのでしょうか?
 スズメたちはうっとおしそうな目で飛んでいくカラスを見送っています。
「あいつはいったい何をしているんだ?」
フクロウじいさんも寝ぼけ眼で面倒くさそうに空を見上げていますが、、、。

 それでもカラスはお構いなし。
カー カー、カー カー。
遠くまでよく響くあの声で辺りを掻き回しています。
ツバメたちも餌の虫に逃げられてしまって迷惑そう。
「カラスのやつ、あんな大声で泣きわめいたらぼくらは餌も取れないよ。」
 迷惑がっているのは何も鳥たちだけではありません。
オオカミだってウサギだって困り果てていました。
 「あんな真っ黒い顔で飛び回られたら誰だって驚いて逃げちゃうよ。 俺なんか三日も食べてないんだからな。」
うーーーーん、それはどうかと思うけど。

 そこでみんなはカラスを捕まえて懲らしめることを考えました。
でもいいアイデアが浮かびません。
 それを見ていたフクロウじいさんが言いました。
「わしに任せておくれ。」
 じいさんはカラスをやっと捕まえて話しました。
 「君はさ、真っ黒い顔で大きな声で飛び回っているが、いったい何をしているんだい?」
「何でもいいだろう。 好きな時に好きなことをするんだ。 食べたい時に食べて寝たい時に寝る。 悪いのか?」
じいさんは考えました。 こいつに物を探させようと。
「なあ、カラスよ。 わしが探し物を頼んだら聞いてくれるか?」
「じいさんの頼みか? 悪くは無いな。」
「じゃあ、探してくれ。 山奥の泉のふちに10年に一度、夜だけ花を咲かせる木が植わっている。
その木の実はすこぶる甘くて美味しいんだが、誰も見た者が居らんでな。
いつ咲くのかも、何処に咲くのかもどんな花かも分からんが、山奥で咲くことだけは確かなんじゃ。
お前は目もいいし、鼻もいい。 探してくれるか?」
「分かった。 山奥の泉のふちだな?」
 カラスは納得すると山奥へ飛び去って行きました。
それから数年、あのカラスを見た者は居りません。
声を聞いた者も居りません。
カラスが生きているのか死んで居るのかも誰も知らないのです。