「ああ、その報告は受けている、別の偵察隊からな」
「そうです、あの夜のことでした」

「覆面の集団とは? 彼らはどの方向からきてどの方向へ去って行ったのだ」
「・・あ、なにしろ真っ暗闇でしたから目元も見えず。でも、山の方から来て西に走って行きました」

「西、というと、ラクレス隊の宿舎がある場所だな。そしてそれは何時頃だったのだ?」
「・・たしか、夜の八時頃だったと思います。仲間と晩飯を食べようと食堂を探していたので」

 うん、とアーロンはじっと何かを考え始め、
「・・でも、それが何かあるのでしょうか」
「いや、なんでもない。ご苦労だったな」

 そしてソフィーに向き直って、
「それで、その後のお父上について何か心当たりはないのか」
「なにも、わからないのです。国境のラクレス隊からも使いが来て所在を聞かれたのですが、私にはまったく・・」

「・・そうか」
 深い目の色をしてうなずいた。


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