「ちょっと、あなた、ここで何をやっているのよ!」

 けたたましい声で飛び起きた。
「あなた、ヴェンでしょう? なんでここで寝ているのよ」
 ソフィーが上から見下ろしている。

 あっと言って身を起こした。
 あろうことか、あれこれしゃべっているうちに眠ってしまったのだ。

「お嬢さま、こいつは悪い奴じゃないんで」
 デイズがあわてて口を添える。
「こいつはアーロン・ハインツ様の私兵なんで。アーロン様も信頼できる立派な方で」

「知っているわよ、そんなこと」
 言下にいった。
「あなたたちに使っている薬、その代金はあの方の財布から出たのよ」
「・・・え?」

「ぜんぶアーロン様が出して下さったのよ、太っ腹ね」
 あっけらかんという。
「それから、まだこれから買う予定の薬代、あの店全部の商品のお金も引き受けてくださるわよ、たぶんね」

 そんなやり取りを、包帯だらけの兵が見ていた。
 彼らの口がポカンと開いている。

 その中にいる疑似負傷兵のヴェンまでも、同様に。


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