逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 ソフィーは臣下と母の葬儀を進めていた。

 曇天の下で棺を墓地に運ぶ。
 喪服を小ぬか雨が濡らしていく。
『・・お嬢さま』
 乳母がそっと傘をさしかけた。



 その雨は夜まで続いた。

 国境でラクレス公は手を合わせていた。妻の葬儀が今日だったことをさっき聞いたのだ。
 まだ十代の娘が喪主となって取り仕切る、その姿を思って胸が熱くなった。

 と、さっきまで鳴いていた梟の声が途絶えた。
 部屋の回りがやけに静かになっている。