逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 身を切られる思いで娘を見送った。密書の件でもソフィーは即座に帰らせるべきだった。

 そして、自分自身にも危険が及んでいる。
 
 王宮からの応援をじりじりと待った。
 だが数日経っても返事がない。
 伝令に立った兵は殺傷されている、そう推察するしかなかった。


 ダン・ラクレスは国境を見つめていた。

 事態が予期せぬところまで進んだと思った。
 このままケイネが、そしてバッハスが自分を見過ごすはずはない。

 我が隊がケイネ隊と総力で戦えば被害は甚大になる。さらに同士討ちでバッハスの思うつぼになるのだ。それは出来ない事だった。                                       

 心のどこかに、覚悟を決めるものが生じていた。