「馬鹿者がっ。お前はどうしていつもこうなんだ」
ケイネの屋敷に怒鳴り声が響いた。
「ラクレスの娘を連れて来いと言っただろうが。それを途中で手放しただと? なぜ死に物狂いで引っ張って来なかったのだ」
ギースはうらめしげに見上げると、
「でも突然来た酔っ払いは何人もいたんだ。だから俺一人では」
「酔っ払いだと! たかが平民だろうが。なぜこっちが弱腰になってしまうのだ」
「でもこれは父上のせいでもあるんだ。あの事件で俺を勘当して、満足に小遣いもくれなかったじゃないか」
「あの事件だと?」
「例の密書のことだよ」
「し、しかしあれはお前が悪いんじゃないか」
確かにそうだった。だが、
「あのソフィーを連れてくるときは辻馬車で帰って来たんだ。途中で路銀が無くなって歩く羽目になったんだ。屋敷までの金があればこんなことにはならなかったんだよ」
「それもお前を立ち直らせようとしたためだ。密書で大失態をおかしたくせに何を言っているんだ」
「あれを失態と言うのですか」
「そうだ、お前のせいだろうが」
「あの状態ではどうしようもなかったんだ。密書を処分しようにも、そんな隙も時間もなかったんだ」
「だからあのソフィーを連れて来いと言ったのだ。連れて来て密書のありかを問いただすのだ。お前はそれもできなかったのだぞ」
燃える目でギースを睨むと、
「ええい腹が立つ! よく考えてみることだ、自分が何をしでかしたのかをだ」
捨て台詞を残して部屋を出た。
ケイネの屋敷に怒鳴り声が響いた。
「ラクレスの娘を連れて来いと言っただろうが。それを途中で手放しただと? なぜ死に物狂いで引っ張って来なかったのだ」
ギースはうらめしげに見上げると、
「でも突然来た酔っ払いは何人もいたんだ。だから俺一人では」
「酔っ払いだと! たかが平民だろうが。なぜこっちが弱腰になってしまうのだ」
「でもこれは父上のせいでもあるんだ。あの事件で俺を勘当して、満足に小遣いもくれなかったじゃないか」
「あの事件だと?」
「例の密書のことだよ」
「し、しかしあれはお前が悪いんじゃないか」
確かにそうだった。だが、
「あのソフィーを連れてくるときは辻馬車で帰って来たんだ。途中で路銀が無くなって歩く羽目になったんだ。屋敷までの金があればこんなことにはならなかったんだよ」
「それもお前を立ち直らせようとしたためだ。密書で大失態をおかしたくせに何を言っているんだ」
「あれを失態と言うのですか」
「そうだ、お前のせいだろうが」
「あの状態ではどうしようもなかったんだ。密書を処分しようにも、そんな隙も時間もなかったんだ」
「だからあのソフィーを連れて来いと言ったのだ。連れて来て密書のありかを問いただすのだ。お前はそれもできなかったのだぞ」
燃える目でギースを睨むと、
「ええい腹が立つ! よく考えてみることだ、自分が何をしでかしたのかをだ」
捨て台詞を残して部屋を出た。

