「あなたも行くのですか?」
 駆け寄るソフィーに、
「こんな面白い話を聞いたのだ、人任せにできるか」
 ア―ロンだった。

 平服を着ていてもその容姿と上背はとび抜けている。
「アーロン様、それでは変装も何もあったものじゃありませんが?」
 ヴェンがつい口にする。

「しかし、どうだ似合うだろう」
 ソフィーに向かって茶目っ気さえ浮かべていた。

「どうぞ、あぶない・・」
 最後までを言わせずに、
「大丈夫だ心配するな。相手はそこらのゴロツキだ、一瞬で捕らえてみせるさ」

 馬丁が馬の準備をする間にも、
「あんがい民間の捜査も面白そうだな」
 呑気そうに言う。
 日頃軍を率いている彼には特異な行動なのだろう。剣もやや小ぶりのスモールソードに変えていた。

 騎馬で大門に向かうときも並足だった。

 だがそれは一瞬で変わった。
 門を出てソフィーの影が無くなったとき、
「わが家から軍事機密を持ち出させただとっ? ただでは済まさん、覚悟しておけよ!」
 悪鬼のように怒鳴った。

 ドッドッドッと駆ける集団に、通りの人は驚いて振り返った。


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