「なんですと!」
「あの国はここグリント―ルへ侵攻を企てて、無残な結果に終わりました。バッハス国内でもその責任を問う動きが起こったのです」

 バッハス国内が流動的だとは聞いていた。しかしクーデターが起こったとは・・。
「それで、あの国はいったいどうなっているのですか」
「我が国に来た使者は、二つの勢力がしのぎを削っていると申しております」

「使者が来たのですか、バッハスからあなた国まで?」
「はい。実はクーデターで新王になったのはバッハス王の弟なのです。彼は名前をパレスといって我がマリンドウに留学していたことがあります。それでマリンドウ王とも親しいのです」
「なるほど、そうでしたか。するとかの国は、兄弟で王座を争うことになったのですね」

 弟のパレスは新王に立った。その直後に正式にマリンドウ王に経過を伝えて来たのだという。
 その行動はマリンドウに自分と新政権を擁護して欲しいという思惑がうかがえた。

「パレス新王は、侵攻に費やして荒れたバッハスの再興を目指しています。そのかたわら、このグリント―ルと不可侵の条約を結びたいと願っておられます」