間違いなくあの人を愛している。
 言い尽くせないほどのものがある、そしてこの道を歩こうとしている。それは自分の本能だった。間違いなく自分の望むものだと思った。

 篝火がゆらゆらと燃えていた。
 パチパチとはじける炎、風になぶられる炎。


 ・・と、暗い闇から物音がした。
 馬の蹄だった。

 ドッドッドと駆けてくるのは早馬だろうか。
 こんな夜更けに? 
 見えもしないのに庭を凝視した。

「大変でございますっ! 宰相殿が、シュテルツ様が暴漢に襲われて」
 男の大声が玄関に響き渡った。

 次々と部屋に明りが灯っていく。

「なにっ、くわしく話せ! いったいどうしたというのだ」

 湯殿から上がったア―ロンが詰問した。