逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

「今は双方が睨み合っています。だが何のきっかけで全面戦争に突入するやもしれません」
 宰相補佐も前に出て、
「それでシュテルツ様がおっしゃるには、会見は棄権されてはどうかと。ぜひご一考されたいとの事でございます」

 執事が顔色を変えた。
「それは大変な事態です、中止して下さいませ」

「それで、マリンドウの宰相はどうされるのだ」
「宰相殿は昨日のうちにセンダに到着されています」

「その宰相の意向は? 中止するという連絡はないのか」
「今のところ、ございません」

「ならば行かねばなるまい。二国の代表が揃うのだ、我が国だけ欠席するなど有り得ない」

「し、しかしアーロン様」
「現地の状況が変わったから、その当日に止めるなど出来るものか」

 愛馬に近づき騎乗する。

 走り出そうとしたとき一人の影が見えた。ソフィーだった。
 目が何かを訴えている。

 アーロンが微笑みかけた。

 声が出なかった。
 出発する彼をただ見送るしかできなかった。


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