逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

「ソフィー?」
 アーロンが追ってくる。
「気分でも悪いのか、こんな所で」

「いえ、みんなの熱気に当てられて。ほら風が気持ちいいでしょう」
「本当だな」

「アーロン様」
「ん? なんだ」

「幸せです、私は、この上なく」
「噛みしめてくれ。これが君に贈る精いっぱいの気持ちだ」
「はい」

「そうやって笑っていてくれ、これからずっとだ。その笑いを消さないでいてくれ、何があってもだ」

 抱きしめられて目を閉じる。
 アーロンの胸で幸せに酔いしれていた。

「・・何があっても」
 と彼は言った。その言葉を意識の外で聞いていた。

 ホウホウと梟が鳴いている。
 ア―ロンが木立に目をやった。

 梟の姿は見えない。だが枝葉の向こうに透かし絵のように浮かぶものがある。
 地方へ向かう街道だ。
 それを進んで行くと幾つかの領に出る。それを抜けるとセンダの町だった。

 彼の目は、そのセンダに向いていた。


          * * *