その廊下をアーロンに続いて行く。
 あとにはヴェンと側近が従っていた。

 両側にいくつもの扉があり、その間の壁には精密なレリーフが飾られている。そのレリーフは一見同じ図柄のように見えた。しかし実は物語が進んでいくように絵柄が変化している。遊び心のある仕掛けだった。

 部屋の扉も、壁の燭台もさり気なく贅が尽くされている。
 ここはいったいどなたのお屋敷だろう。

 ・・ただ、屋敷中に人の気配はほとんど無かった。
 しばらく無人であったかような静寂さが漂っている。

 一番奥の突き当りに、一人の影が見えた。
 近づくにつれてその顔が鮮明になる。

 五十がらみの白髪の紳士だった。
 彼はアーロンとソフィーを見て深い笑みを浮かべた。そしてゆっくり頭を垂れた、
「ようこそおいで下さいました」
 と。

「ああ、彼はこの国の宰相であるシュテルツ殿だ」
 初対面になるソフィーに告げた。