逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

「それに、アーロン様もアーロン様でございます。もう少しソフィー様の立場をお考えにならないと。それをこんな昼過ぎまでずっと・・、です」
「ああそうか、昼過ぎまでずっと・・、か」
 オウム返しに答えた。

 二人は顔を見合わせた。次に申し合わせたように二階の部屋を見る。
 窓は、まだしっかりカーテンが閉まっていた。

 ポカンと太陽が一つ、真っ青な空に浮かんだ昼下がりだった。

 リズはふいに笑って、
「でも結構なことですよ、仲がよろしいのは。お屋敷もこれで万々歳かも知れませんね」
「そうだな、長らく気に病んでいたのだ」

 今度は阿吽の呼吸だった。

「このままハインツ家が廃絶したらどうしようかと。後継者がないというのは致命傷だ。他家から養子をもらうこともお勧めしたのだ、だがアーロン様は渋られて。もうどうしようもないと思っていたのだ」

 今さらのように汗を拭う振りをした。
 それを見て、リズはフフフと笑う。