逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 それを見てソフィーは息をついた。

 思案気に辺りを見る、誰もいない。
 だがダイニングに向かうでもなく、二人が去った玄関に行くでもなく立ち止まっている。
 
 次に仕方ないというふうに回れ右をした。
 そして今来た階段を上り始めた。


 リズは執事の前に出ると、
「あなたも少しはお考えになられませ」
 唐突に告げた。
 二人は庭の石畳を歩いていた。

「考えろとは? 一体何を考えろというのだ。いきなりそんな忠告めいた事を言って。私はこの家の執事としてずっと忠実に」
「さっきのソフィー様の事ですよ。あなたは、お早うございますと挨拶しましたね」
「そうだが」

「いま何時だと思っているのですか。もうお昼を過ぎております。それから次になんとおっしゃいました? 朝食の準備ならとうに出来ております、ですって?」
「それの何がいけないんだ。私はソフィー様がさぞお腹を空かしているだろうと」

「だから、朝食も召し上がらずなぜお部屋にいらしたかということですよ」
「はて。きのうは体調が悪いとは聞いてなかったし」
 と考え込んでいる。