「・・それにしても早くないか?」
 シュテルツが小声で言った。
「まだわが国は戦禍が収まったばかりだ。いや、傷跡が生々しいのにこれで祝辞だと?」

 アーロンが苦笑する。
 隣国の王の思惑はわからない。

 マリンドウ王はバッハスの侵攻が収束してからわずか三日後に来たのだ。
 さらにその前触れは前日の夕方、まさに突然の訪れだった。

 一国の元首の来訪は当然のことだが大所帯だ。側近や護衛を含めて総勢百五十名の人員がやって来た。
 王を守る体制としては妥当だ。しかし、突然それを迎え入れる困惑は果たして考慮されているのか。

 到着したマリンドウ王は即座に妹のグリンドラ妃を呼んだ。その息子である五歳の王子をもだ。

 王は王子に相好を崩して話しかけ、王子も体をすり寄せて甘えている。