逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 玄関に馬車が停まった。
 リズが帰って来たのだ。
 
 迎えた侍女に、
「留守中、変わったことはなかった」
「はい、これといって。・・あ、アーロン様が今朝、暗いうちにお帰りになりました」

「王宮ではさぞお忙しかったのでしょうね。それで、ソフィー様は?」
「それが今日はまだちょっと」

 侍女が近寄って耳打ちする。
「まあ」
 驚いた顔が微笑んでいた。

 そんな光景を執事が見ていた。
「ご苦労さん、レブロン邸は片付きましたか」

「ええ。なにしろ大所帯ですからね、負傷兵とラクレス家の侍女と」
「それから新しく雇った看護人が五名でしたな」