逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 女が路地を歩いていた。

 ストールが風に煽られる。抑え込もうとしたがうまくいかない。
 あきらめてまた歩き出した。

 目の前に小屋が現れた。

 入ると男が待っていた。黒い髭のラプターだった。

「持って来たのか」
「これで最後よ、これ以上なにもできないわ」

 女は侍女のエレナだ。
 ぶら下げた袋から出てきたのは銀の燭台。

「これか、売れば幾らかになるだろうがな」
「お願い。もう私にかかわらないで。屋敷の人が感づいているみたいなのよ」