逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 宰相補佐が入ってくる。
 オルグを見ると静かに礼をした。

 オルグは故グリンドラ王の左遷にあって地方に流された経緯がある。
 互いの立場は微妙なものになっていた。

 シュテルツは半身を起こした。
 二人が止めようとする。

「大丈夫だ。寝ていては話が出来んからな」  

 そして、
「単刀直入に言おう。私は君ら二人に政務を担ってほしいのだ」

 予期した言葉だったのだろう、彼らは黙っている。

「そうやって政務を固めて、その上に立つ人物も考えている。だが煮詰まってはいない。彼に(てい)よく躱されているからね。だがわが国が立ち直るには欠かせない存在なのだ」

 声は小さい、だが凛としていた。

「現在の宰相補佐である君はそのままに、そしてオルグ、君は宰相の顧問として立って欲しいのだ」

 彼らが絶句する。

「それを置き土産にしたいのだ。・・私の、この世の最後のね」
 
 部屋に沈黙が訪れた。
 長い間、誰も微動だにしない。

 やがて二人が姿勢を糺した。
 そして申し合わせたように頭を下げた。


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