国のためとはいえ、長年住み慣れた家を放棄してくれたのだ。
 説得に応じてくれた彼らのために補償を敢行しなければならない。

 いま、王族が消えて国の基盤が大きく揺らいでいる、国民の信頼をここで裏切る訳にはいかないのだ。

 辺りは夜の闇に包まれていた。
 一面の廃墟が広がり、あるはずの人家の灯が消えている。
 大勢が暮らしていた街の、この静けさはどうだろう。

 背筋のどこかがふっと寒くなった。

 そこここに得体のしれない亡霊が潜んでいそうに思えた。


          * * *