逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

「そのご令孫のアーロン殿も東西きっての才子であられます。私がお教えしたら瞬く間に覚えてしまいますよ」

 ア―ロンが憮然と睨む。
 かたやシュテルツは満面の笑みを浮かべている。

 軽妙にやり合っているが、ことは国家の重大事だ。
 二人の間に立ってソフィーが困惑していた。

 アーロンが気付いて、
「いやしかし、今日はそんな話をするはずじゃなかっただろう。彼女にこの屋敷を紹介して、ここをどう使うかを説明するんだったな」

「私としたことがつい脇道に逸れて」
 と頭を叩くと、
「先ほど業者が荷物を運び込んだのです。どうぞご覧になってください」
 次の部屋に案内した。
 
 そこはベッドが並んでいて、
「このようにひと部屋に六人入れるようにしました。それを七部屋用意したので四十二人受け入れる事ができます」 

「ご苦労だったな。これで負傷兵がいつ来てもいいという訳だ」

 え? とソフィーが、
「負傷兵って、それはもしかして」
「そう、あの洞窟の負傷兵だ。明日はここへ来てもらおうと思っている」

「あ、いえそんな。由緒あるこのご邸宅を、とんでもないことでございます」
 天下のレブロン家だ、国境警備で怪我をしたとは言え下級の兵に使うなどと。

「問題ない。この屋敷の相続人は俺だ、誰にも文句は言わせない。国のため負傷した兵に使うのだ、レブロンの先祖も喜んでいるだろうよ」

「でも」