逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 彼はソフィーに向き直ると、 
「先ほどお話した通り、デューク様には後継者がいませんでした。そこで当時の部下だった私を次の宰相に指名されたのです」

 シュテルツは、臣下の自分が政務の長に立つだなどと、と辞退した。
 その意志が強かったので、デューク・レブロンは一つの案を出した。

 自分の孫であるアーロン、彼はハインツ家の後継者だ。
 だが彼に二人目の子供が生まれたらレブロン家にもらい受けよう。その子を次の宰相にする手があるのだと。
 それまで君が宰相を務めて、その子に引き継いでほしいのだと。

「だがしかし、です。この方は一向に嫁をもらおうとはせず、いやヤキモキさせられました。私はもう駄目だと思っておりました。お互い五十の歳を迎える事になったからです」

 アーロンはそっぽを向いている。