逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

「今まで大変な思いをされましたね。洞窟で負傷兵の世話など誰でもできることではありません、ご苦労をお察し申し上げます」

「あ、あの?」

「もういいだろう。彼女は困惑している、仔細を明かしてやってくれないか」

「はい。まずこのお屋敷はレブロン様のご邸宅でございます」

「レブロン様!」

 グリント―ル国民なら誰でも知っている高名な名前だ。
 先の宰相、つまりシュテルツの前の宰相のデューク・レブロン侯爵、その屋敷だと。