登るにつれて人家がなくなり暗さが深くなる。
 前を行くソフィーを見失いそうだった。

「なんだか狐でも出てきそうだな」
 つぶやいたとたん暗闇から目鼻口が出た。

 うわっとヴェンが叫び、
「ありがとう」
 その目鼻口がいった。

「ここまで来たら大丈夫よ。だからあなたはもうお屋敷に帰って」

「帰れって、この荷物はどうするんだよ」
 肩には大量の薬袋がある。

「そこに置いておけば大丈夫よ、あとで仲間が取りに来るから」
「え、仲間?」

「そうそう、アーロン様によろしく伝えておいてね」

 その声はもう向こうに遠ざかっている。
 まだ道は続いているのに、ふいに脇の茂みに入って行った。