「気になる、こと?」
「そうよ。この前、国境で紛争が起こったでしょう? それは両国のお偉方で協議しているらしいんだけど」

「・・ええ」
「その他にもね、わが国のグリンドラ王が、向こうの新国王に親書を送ったんですって。即位を祝福する内容でね。でもその返事はまったく無いんだそうよ」

「え? それっていったい」
「だから向こうの腹が読めないのよ。なにか魂胆があるんじゃないかって勘ぐってしまうでしょう?」

「そうしたら、もしかして何かが起こるかもしれないってこと?」
「だからね、王宮でも向こうの出方をいろいろ推測しているらしいわよ」

「うわぁ、それだったらちょっと怖いわね」
「うちの旦那様は国軍の最高司令官でしょう? なにか問題があれば矢面にたつお立場なんだから」

「・・ええっ、それって本当に大ごとじゃないの?」
「そうなのよ。なにごとも無ければいいんだけどね」

 申し合わせたようにため息をついた。

 二人はつぎつぎに窓の鍵を閉めていく。
 そして部屋の灯が消えて、足音が遠ざかった。


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