逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 物見の塔から白煙が上がった。一筋の線を描いて登っていく。

 アーロンは眼下を向いて、
「今より全員高台に上がれ! 地上と一階には誰も残るな」

 それを合図にすべてが階段を駆け上がる。

「どういうことだ、一階に残るなとは」
 シュテルツが問うた。

「心配するな、周辺の民にも言ってある。平地に残るな、丘や山へ駆け上っていろと。そこなら水にのまれない」

「み、水だと? のまれるだと?」


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