逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

「来たぞぉ! バッハスがやってくるぞぉ」

 物見の塔の兵が怒鳴った。
 一番高い所にあるそこから敵が一望できる。

「バッハスの本体だ! 向こうの大通りから迫っている」

 あちこちからどよめきが起こった。
 低地にいる兵は見ることが出来ない。

 一瞬不意をつかれた心理になる。
 その動揺が手に取るように分かった。

「落ち着け!」
 ア―ロンが怒鳴った。

「我らの準備は万全だ、寸分の隙もない。今日こそ全てが決まるのだ! 心して立ち向かえっ」