逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

「でも敵と戦うなら国境で迎え討てばよかったんじゃないの。この王都まで侵入を許すなんて」
「そうよ、向こうで食い止めたら王都の被害はなかったはずよ。なぜそうしなかったのかしら」

「アーロン様は一人の戦死者も出したくないとお考えだそうだ。国境でもラクレス領でも、あれだけの大軍を迎え討てば我が軍に甚大な被害が出るだろう」

「ま、まあ、それはそうでしょうね」

「考えても見ろ、お前の旦那は国軍の兵士だったな。その旦那がべらぼうな敵と戦ってみろ、一体どうなるか」

「そ、それは嫌だわ、絶対に」
 女の顔色が変わった。