逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

「あれは何かしら」
 女が聞いた。

 向こうから徐々に近づいてくるものがある。

「とうとう来たんだ、バッハスだ」
 男が答える。

「ええっ、あんな大軍が来るの? どうなってしまうのこの街は」
 
 小高い丘に人が集まっていた。
 彼らは一様に西の方角を見ている。

「恐いわ、彼らはこの国を乗っ取ろうとしているんでしょう」

「だが国軍が守ってくれるんだ、司令官のハインツ様が指揮を執って下さってな」

「だからこんな丘に登っていろとお触れが出たのね」
「そうだ、一人残らず高台に避難しろとのお達しだ」