逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 地上から風が吹き上がっている。
 ヒューヒューという音に混じって何かが聞こえた。

『・・フィアーラの花です』
 彼女の声だった。

『今年も咲いていてくれたのね』
 うれしそうに微笑んでいた。

 あの花の香りに一晩中包まれていた。

 あのとき、二人は朝までフィアーラの香りに包まれていたのだ。

 知らず笑みがわく。

 この空のずっと向こうにソフィーがいる。
 アーロンの武運を祈っているだろう、そして待っているだろう。

 今まで何度も出陣はしてきた。
 だがついぞこんな前哨はなかった。

 自分の中で何かが変化しているのを悟った。