「それを知らせに国境まで行ったのですが、任務があるから葬儀はお前に任せると」
「葬儀を、任せると」
 
 ソフィーは二十歳前に見える。そんな若い娘に母親の葬儀を頼むだなどと。

「そんなことがあって、屋敷には誰もおりません」

「誰もとは? 執事や侍女はいるのではないのか。彼らがあなたの帰りを心配しているのではないか」
「執事と家令は相次いで辞職しました。侍女達は、その、私と一緒に」
 そこで声が消えた。困ったように口をつぐんでいる。

 暖炉の火が彼女を照らしていた。
 目を伏せた横顔がゆらゆら揺れている。

 ソフィーはナイフとフォークを置いた。
「あの、私は」
「うん?」
「一人だけこんな温かい物をいただけません」