「どこか連絡する所があれば使いをやろう。ラクレス家に伝えることがあれば早馬を出すから」

 ラクレス領の令嬢があんなふうに連れられていたのだ、事情があるのだろうと目が言っている。

「あ、いえ、私は」
 言葉が喉を通らない。
 それでも根気よく待っている彼に、

「父は、ダン・ラクレスは国境を警備している領兵の元に出向いています」
 アーロンがうなずく。国防で承知のことだった。

「母は、その、半月前に亡くなりました。以前から病弱だったのです」

「亡くなられた? それは大変だったね。だとしたらラクレス公は屋敷に帰られたのか」