逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 デイズの熱は下がらなかった。
 それどころか顔が土色になり、意識が混濁するときがある。

「もう、駄目だ」
 苦しい息の下で口走る。
「ほうっておいてくれ。どうせ、俺は、死ぬんだ」

「バカなことを言わないで。乗り越えるのよ、いっときの辛抱だから」
 
 そんな問答に、
「屋敷に出入りしている医者を呼びにやらせた。だがいつも患者の家に出ているからつかまるかどうか」
 アーロンが声をかける。

 そんな夜がじりじりと更けていった。