逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 デイズも覗き込んで、
「あれなら上から棒で動かそうとしても無理です。誰かが潜って木にロープをかけるんだ。ただし流木があの角度で接触しているのなら細心の注意が必要だ」

「細心の、注意?」

「そうです。あの様子だと木は一本じゃない。その下にも何本かあるはずだ。上の木を動かそうとするでしょう、すると下の木に何らかの力が加わる。すると木がてんでに動いて桟にぶつかる、それで桟が壊れるかもしれないんだ」

「なにっ」

「だから水中で流木の絡み具合を見てロープをかける必要があるんです」

 皆がいっせいに保守兵を見た。

「ぼ、僕は無理です。保守兵と言ってもまだ見習いで。そういう担当は先輩がやっていたんですが、今あの人は国境に駆り出されていて」
 国境警備の補充に行っていた。

「だったら一体どうするんだ」

「では、俺が行ってみましょう」
 デイズが前に出た。

「デイズは無理よ。脚の傷が完全にふさがってないでしょう、水に入ったら化膿するかもしれないわ」

「今は一刻を争うときです、それほど危険なんです」

 きっぱり言うと上着を脱いだ。
 堰堤から水に入って行く。