逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 アーロンは水平に横たわる桟を数えていたが、
「この桟は第一から第八まであるんだな」

「はい。水圧の関係から下になるほど幅が狭く頑丈に造られています」
 
「それで、これを第一から第八まで一気に引き抜いたらどうなるのだ」

「それはとんでもないことになります」
 デイズの顔色が変わった。

「洪水が起こって予測できない事態になります。その挙句、下で支えている岩盤まで崩壊するかもしれない。そうなると湖全体の水が流出する恐れがあります」
「崩壊するかもしれない? 湖全体が」

「そうです、大量の水の力がどう動くのかは予測出来ません。この湖は見た目よりずっと水量があります。取り囲んでいる山が峻嶮なように、湖の底は途方もなく深くなっているからです」