逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 そのときだった。
 外から馬のいななく声がした。

 屋敷の門番が誰何する声がする。それに答えての短い応答。
 続いてギィーッと大門が開く音がした。

 賓客だろう、王宮からの使いかもしれない。

「どうしろと言うのだ、こんななり(・・)で」
 アーロンが詰め寄れば、

「会えばいいだろう、そのままで」
 しれっと言う。
「バカを言え! 出来るか、そんなことが」

 家人が慌ててやって来る音がする。
「アーロン様、王宮からのお使いです」

 絶句してシュテルツを見た。
 しかし彼もなすすべがない。

「だったら、こうしたらどうだ」
 ワイトがやたら暢気そうに言った。

「どうするのだ!」
 つかみかからんばかりに聞いた。