逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

「落ち着け、落ち着くんだ!」
 ワイトが大声を出した。

 若い青年がそこらを走っている。
 その場でピョンとはねたかと思うと、また走り出す。
「軽いんだ、体が。信じられんほど動くんだ、若いときのように」

 同じく青年の姿になったワイトが笑いだした。
「そうだろう」

 ただ一人、
「なんなんだ、これは、いったい」
 若い二人に囲まれたシュテルツが頭を抱えていた。

 コンコン、と部屋の扉が叩かれた。

「旦那様、どうかされたので? 大丈夫でございますか」
 執事だった。ドスンドスンという音に心配したのだ。

「いや何でもない。大丈夫だ、気にするな」
「はい? さようでございますか」

 首を傾げながらドアから去って行く。